熱心なあまりに

子どもの自立は、保護者であれば共通する願いの一つ。

毎晩12時を過ぎても漢字の宿題に取り組む子ども。

真面目な保護者と、親の期待に応えようと必死に努力する子ども。

なかなか成果の上がらない子どもに、感情が抑えきれず叱責をする日々。

「なぜ?どうして?」が少しでも理解できれば、対応の仕方が変わります。

 

以前に、滋賀県のクリニックで絵を描くことがとても上手なお子さんと出会いました。色鮮やかなその作品はコンテストでも入選をし、素人の私にもこの子の才能がよく分かりました。

しかしこのお子さん、漢字がなかなか覚えられませんでした。毎日繰り返し取り組んでも覚えることができませんでした。保護者は、「こんなに絵が上手に描けるのだから、漢字ももっと頑張って書いていれば必ず覚えられるよ。」と励ましていたそうです。

それでも覚えることができなくて、担任の先生から「どのように見えている」のか詳しく調べてもらってはいかがですかと、クリニックを紹介されました。

検査の結果から、読み書きの苦手さは本人の努力不足ではないことが分かりました。両親と本人に結果を説明し終えると、お子さんは優しい口調で「なぁ、お母さん、分かったでしょ。だから もう、きつく言わんといてな。」と語り掛けました。それを聞いた母親は何度もうなずきながら涙を流されていました。

 

他の検査の結果と照らし合わせて、このお子さんが少しでも学びやすい方法を提案し、学校とも連携して家庭での指導につなげていただくことができました。「これからは、怒るのではなく、どうしたらこの子ができるようになるのか、一緒に考えます。」と保護者からも嬉しい言葉をいただくことができました。

お互いに前を向いて進もうとしているにもかかわらず、理解しあえないことはとても苦しいと思います。しかし理解ができることで次の対応の仕方が見つかります。

見通しの立たなかった保護者の表情もやわらかくなり、周囲の大人が連携をして支えていく良いきっかけとなりました。